ワンちゃんの呼吸器系診療

ブログを再開したとたん、泊まり込みの治療が続き、ブログを更新するのもなかなか大変です。
約1週間、3時間の睡眠時間でも、まだ何とか仕事ができる体力はあるようで、少し安堵しました。
大学生の頃、空手が中心となる生活だったことが幸いしているのかなあ。
国体強化指定選手に選ばれた当時のことは、今では懐かしい思い出です。

前回に引き続き、今回も風邪薬について記載します。
ペットショップの子犬ちゃん達の診察をしていると、一番多い症状は咳と鼻汁です。
何かしらの症状が出ていると、子犬たちはいつまでも新しい家庭に迎えられないので、最善の治療を心がけているところです。
呼吸器系の薬で身近な薬剤は、私たちがドラッグストアで購入する風邪薬でしょう。
一般的な風邪薬は複合薬で、鎮咳薬(咳止め)や去痰薬(痰切り?)などが含まれます。

鎮咳薬

「先生、咳を止めてください」とお願いされることは多いのですが、「はい、分かりました」と言えない状況があります。
咳はむやみに止めると、かえって症状を悪化させることがあります。
通常は咳の原因となる疾患の治療を優先するということになるので、ペットショップの子犬さんの場合でも鎮咳薬を処方する機会は少ないです。
鎮咳薬にも数多くの種類があるのですが、一般に鎮咳薬のビック2と言えば、
「リン酸コデイン(コデインリン酸塩)」と「デキストロメトルファン」だと思います。
リン酸コデインは、いわゆる麻薬に属します。そのため、使用にあたって何かと手続きや報告が必要で、なかなか使用しづらい薬です。
また、デキストロメトルファンは、咳のひどいワンちゃんに投薬しても効いたと実感できたことはありません。結局のところ、使える薬が無いのが現状です。

去痰薬

難しい薬名ですが、要は痰が出て呼吸が苦しくなるのを改善する薬のことです。
ところが、一概に去痰薬といっても、こちらも数多くの種類があります。
当院でも、痰の性状(咳き込みの仕方)によって薬を使い分けています。
当院で使用している去痰薬は、
「アンブロキソール塩酸塩」「ブロムヘキシン塩酸塩」「カルボシステイン」「アセチルシステイン」です。
ただし、吸入薬を除くと、経口薬では効き方の切れ味が悪く、治療が長引くことも少なくありません。
切れ味の良い(効果の高い)薬の登場を願うばかりです。

余談ですが、一見、呼吸器系症状と思われる咳込みや呼吸困難の症状で見落としができない病気が「肺高血圧症」です。
私が大学生だったころ、日本人が画期的な発見を行いました。それは血管内皮細胞から分泌される「エンドセリン」という物質です。
この物質の拮抗薬が肺高血圧症の治療薬なのですが、薬価が高いので使ったことがありません。
「バイアグラ」という薬名は多くの方が知っているのではないでしょうか。
この薬は、もともと肺高血圧症の薬で、循環器系薬剤としても効果の高い薬です。
当院は裕福な病院ではないので、効果は高くても薬価が高いので常備できない薬です。


またまた、難しい話になってしまい、失礼しました(^^;)