獣医師が関わる家畜伝染病

前回、届出伝染病のレプトスピラ症を紹介しましたが、獣医師が関わる伝染病の中には診断出来なかったでは許されない家畜伝染病(家畜法定伝染病)があります。

 

2010年に宮崎県で発症し、30万頭近くの家畜が殺処分された疾病も家畜法定伝染病の一つです。

家畜法定伝染病は獣医師として最も関わりたくない伝染病です。

 

国内での発症はもちろん、海外での発症状況にも注意を払っています。

 

そのため、国の機関(農林水産省)は海外からこのような伝染病を国内に持ち込ませないため、動物検疫という検査も行っています。

 

ワンちゃんでは、狂犬病とレプトスピラ症。ネコ(アライグマ、キツネ、スカンク)では狂犬病。サルでは、エボラ出血熱やマールブルグ病などなど。

 

ところが、現在のところ、動物園にいる野生動物に関しては、上記のような動物検疫を国は実施しておらず、野生動物の動物検疫は概ね各動物園に任されているのが現状です。

 

そんな状況なので、動物園で検疫を担当していると、細菌検査や遺伝子検査、抗体検査などに精通してきます。私は動物園勤務で、検査に必要な多くの技術を身につけさせていただきました。

 

このような検査技術を習得するきっかけになったのが、法定伝染病を経験したことです。

 

 

前回、獣医師のちっぽけなプライドという話をしましたが、

今回は、家畜法定伝染病であるヨーネ病に遭遇した時の人間模様?を紹介します。

 

 

200x年、園内で飼育していた山羊にヨーネ病の疑いが浮上してきました。

 

これまで一度も経験したことのない疾病。しかも法定伝染病に指定されている病気。

 

組織のトップに報告するが、結論は出ない。下された指示は、「更に裏を取れ」というものでした。

 

そうは言われても、当時は遺伝子検査の技術は無かったので診断にも限界があり、遺伝子検査の必要性を強く感じた瞬間でもありました。

原因菌の培養は理論上可能なのですが、菌が生えるには数カ月かかります。そんなに待てない。

 

当時、ヨーネ病の原因菌は人のクローン病との関連も報告されていたため、感染が拡大したら取り返しがつかないことになる。

 

伝染病が疑われて1カ月近くが経過した時、確証が持てる検査結果を得ることが出来、即刻トップへ報告しました。

「間違いなくヨーネ病」。これが現場獣医の統一した意見でした。

 

すると、本気なのか、つい弱音が出てしまったのか、組織のトップの口からでた言葉は、「このまま隠し通せないか?」というものでした。役職のある人間は自らの保身に走るのは世の常です。

 

そんなやり取りの翌日だったか、翌々日だったか、記憶は曖昧ですが、ようやく県に伝染病発症の連絡を入れることになりました。 

 

組織とはつくづく誰がトップに立つかで変わってきます。想定外の事態でも、素早い決断が取れる方に要職についていただきたいと願うばかりです。

 

間もなく、国の研究機関よりヨーネ病との確定診断がくだり、動物園は3日間の閉園となりました。その間、徹底的な消毒を保健所の職員とともに実施しました。

 

その後の数カ月は、感染の拡大が無いか徹底した検査を継続させられたのですが、事態を収束させる大変さを嫌と言うほど思い知らされた「事件」でした。

 

今でも忘れられない言葉があります。それは保健所の方から言われたお褒めの言葉です。

「君たちは、よくこの病気を見つけることができたね。高知県では初めてだよ。」

 

この言葉は、後々まで私の励みになりました。 「豚もおだてりゃ木に登る。」 その通りです。

 

 

 

どんな仕事であれ、自らに責任が降りかかる事態に遭遇すると、 人は判断や決断をためらうものです。

 

動物病院の仕事でも、あの時、あの治療は良かったのか、自問自答することは多々あります。

 

後々まで後悔しないよう、日々、精進しているつもりでいるのですが・・・。

 

 

今回も、少し泥臭い話をしてしまいました(^^;)

 

 

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