インターネット上で、こんな記載を見つけてしまいました。
「年間に発症するレプトスピラ症は極めて少ないのに動物病院の先生はワクチンを強く勧めてくる。
レプトスピラのワクチンを勧める獣医は悪徳獣医師だ。」
この書き込みを読んで、「このような考えを持たれる原因は獣医師にある」と痛感したので、今回はレプトスピラ症について記載させていただきます。
レプトスピラ症は人と動物に感染する人畜共通伝染病で、集団発生するリスクが高いので届出伝染病に指定されています。
しかし、問題点はこの「届出」制度と確定診断の難しさにあります。
ここで、レプトスピラを疑う患者さんが来院された時、名医が対応したという物語で診察の流れを紹介します。
ある日、元気消失し、熱っぽいワンちゃんが来院しました。
この日より1週間程前、動物病院の近くにある川が氾濫するほどの大雨が降っていました。
念のため獣医師はオーナーさんに最近その河川でワンちゃんを遊ばせなかった確認すると、
オーナーさんは、数日前、河川で遊ばせたと答えました。
この主訴より獣医師はレプトスピラを疑い、保健所へレプトスピラの検査を依頼し、
大至急「コルトフ培地」を取り寄せ、患者から採取した血液を培地に入れ保健所へ提出しました。
続いて尿を採取して、遠心分離し、沈殿物をPBS液で溶解し、保健所に細菌検査を依頼しました。
などというのが、レプトスピラ症を疑った時の流れですが、ここに様々な問題点があります。
一番の問題点は、レプトスピラ症を疑った時、保健所へ連絡するかどうかです。
大半の獣医師は保健所への連絡をためらいます。
その理由は、この患者がレプトスピラ症で無かったら、自らの診断能力が低いと思われてしまわないかと考える獣医師が圧倒的に多いからです。
つまり、獣医師のちっぽけなプライドが届出する行為を邪魔してしまうのです。
疑わしいという理由だけでは、届出できない心境も察していただけると幸いです。
もちろん、診断の難しさも当然あります。レプトスピラを培養するのに必要なコルトフ培地を常備している動物病院はまず無いでしょう。
黄疸や血尿を呈して初めてレプトスピラ症を疑うことの方が多いのではないでしょうか。
しかし、黄疸や血尿を呈した時は、病気が重症化した時で、診察にあたった獣医師は救命を優先するあまり、レプトスピラの診断のため保健所と連絡を取りあう時間的余裕は無いのではないでしょうか。しかも検査結果を待つ前に対処しないと手遅れになります。
次に確定診断の難しさも届出数が少ない理由だと思います。
動物病院内で感染を確認するには、遺伝子検査に習熟していないと恐らく無理だと思われます。
簡易キットで仮診断が出来る時代がくれば、レプトスピラ症患者の潜在数も把握できるのではないでしょうか。
現実的には集団発生でもないかぎり、レプトスピラ症が届出されるケースは少ないと思われます。
そのため、潜在的な患者数は分からないままで、数字だけみれば、レプトスピラ症は極稀な疾病と誤解されてしまします。
一般の方から見れば、届出される発症数が少ないので、レプトスピラ症は稀な疾患と思われるのは無理からぬことでしょう。
「あのワンちゃん、もしかしたらレプトスピラ症だったかも」という経験をしている獣医師は、意外に少なくないということだけは最後に補足させていただきます。
元、野生動物の検疫官がレプトスピラ症の舞台裏を紹介させていただきました。
コメントをお書きください
chiaki (月曜日, 10 6月 2013 18:44)
毎日お疲れ様です。
診断も大変なんですね。
もし間違った診断をすれば
ヤブ医者なんて思われたら悔しいですしね。
動物達の命を預かる所ですから
間違いないようにと、気をいつも張っていると
思います。素直で、真っ直ぐな気持ちと
動物達の思いやる気持ち、若い自分達にも
分かりやすい説明、だから皆先生に
信頼して着いて行くんだと
思います。人間の病院の方がヤブ医者が
多いのでは?(笑)自分的には思います。
適当な医者が人間の病院には多いです!
悪徳獣医師とかサイトに書き込む人は
要するに暇人の集まりなんですよ(^^;)
気にしてたら、きりがないので
先生は先生のペースで体に負担に
ならないように頑張って下さい。
長くなりましたが、いつもありがとうございます。