炭水化物の摂取量は分からないことだらけ

今回も炭水化物についてご紹介します。

 

今から10年以上も前にロバート・アトキンスという方が考案した「低炭水化物ダイエット」、別名「アトキンスダイエット」が世界的なブームを巻き起こしました。ダイエットの理論は医学的に明快で説得力があったため民衆に受け入れられたのだと思います。しかし、2003年、アトキンス氏自身が多くの持病を抱えた状態で無くなりました。そのころから低炭水化物食の副作用を多くの研究機関が報告し、極端なダイエット法に警鐘を鳴らしたこともありブームは無くなりました。

 

ところが、再び低炭水化物食が見直される論文が2008年に発表され、今回は世界的に炭水化物(主に糖質)の摂取量を見直す方向に進み始めました。炭水化物の理想的な摂取量はどのくらいなのかの論争は今後盛んになってくると思われます。因みに、厚生労働省が作製した「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では低炭水化物食の論文を引用するなど、今後の検討に含みを持たせながらも成人の炭水化物エネルギー比率は50%以上70%未満との見解を示しています。様々な論文が、この比率では高すぎるとの見解を示していますが、保守的な国、日本が摂取比率を見直す日が来るかどうかは分かりません。一度根付いた常識は、なかなか覆りません。常識って何?って思う今日この頃です。

 

では、保守的な国、日本でも参考にされた論文について紹介します。

論文の内容は下記にアクセスしてください。

http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/359/359jul/xf359-03-0229.htm

 

論文タイトルは、「低炭水化物食、地中海食、低脂肪食による減量」で、投稿された雑誌は世界的に権威のある医学雑誌の The New England Journal of Medicine です。

 

3つのダイエット法の中で、地中海食と低脂肪食はカロリー制限ありで、低炭水化物食はカロリー制限なしという食事内容で、低炭水化物食が最も減量効果が高ったというものです。つまり、糖分の摂取量をひかえれば、蛋白や脂肪をたくさん食べても痩せられるというものです。この研究は、イスラエルの322人を対象に、それぞれのダイエット効果を2年間追跡調査した研究です。この報告は、減量を阻むものは血糖値が上昇した時に分泌されるインシュリンにあることを示したものでした。アトキンスの死後、再びアトキンスダイエットが見直されたのです。

インスリンが肥満の要因として注目され始めたのは、身体の中(筋肉細胞や脂肪細胞)にある糖輸送体GLUT4の発見によります。細胞が糖を取り込むには糖専用の輸送体に乗って細胞膜を通過するのですが、筋肉や脂肪細胞にある糖輸送体はインスリンが分泌されると細胞膜に姿を現し、血糖を細胞内に取り込み脂肪として蓄えます。逆に、インスリンが分泌されなければ、血液中の糖分は脂肪として身体に蓄えられないというメカニズムが体内にはあるのです。そのため、インスリンは肥満ホルモンと呼ばれるようになったのです。

肥満は様々な生活習慣病との関連が指摘されていますが、その主犯はインスリンにあるとの報告も多数あります。このことも折に触れて紹介していきたいと思います。

 

余談です。GLUTは日本語でグルットと記載されていますが、私にはグラットと思えてならないのです。取るに足らない余談でした(^^;)

 

ワンちゃんのダイエットに苦労されているオーナー様がいましたら、是非、低炭水化物ダイエットを実践してみてはいかがでしょうか?ドックフードは穀類含有量が多いので、手作り食になってしまいますが、効果は期待できると思います。

 

今回は1例の研究報告を紹介するだけで長文になってしまいました。炭水化物の摂取量を悩ませる論文はまだまだあります。次回も炭水化物について紹介します。

 

再び余談です。以前の栄養学では、炭水化物を糖質と繊維質に分けていましたが、今は2つをまとめて炭水化物となりました。そのため糖質と繊維質ではエネルギー量が違うため些かややこしいと思うですが、厚生労働省の役人はそう思わないのか不思議です。

 

 

 

 

話は変わりますが、昨日の休診日は緊急手術が入り、今日の休診日はのんびりと馬のワクチン注射に行ってきました。ブログでたびたび紹介する動物ふれあい牧場は近日中にオープンするそうです。ただいま、看板の設置や駐車場の整備などでオープン準備に追われていました。オープンしたらテレビ取材も入るようです。オープンまで、いましばらくお待ちください。

 

 

 

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コメント: 10
  • #1

    にしもとようこ (金曜日, 12 10月 2012 18:55)

    低炭水化物ダイエットはどうかと思っていたので大変参考になりました。
    朝食抜きダイエットも流行ったことで、子どもに朝ごはんを堂々と与えないお母さんのお話を保育士さんから聞きました。
    マスコミが作った常識は怖いですね。
    これからもブログ楽しみにしています。
    最後になりましたが、開院おめでとうございます☆☆☆

  • #2

    ameal-ahp (金曜日, 12 10月 2012 20:59)

    ご無沙汰しております。
    コメントまで、ありがとうございます。

    人の食育活動をされているにしもと様に補足です。
    低炭水化物食は成人や肥満が気になる年齢になられた方々の食事法です。
    成長期の子供たち、特に15,16歳以下の子供たちには勧められない食事法です。子供たちが朝食を摂る大きなメリットは集中力がつくことだと思います。それが学力にも結び付くとの報告は多いですね。栄養学という視点で考察すると朝食の考え方に賛否両論あると思いますが、学校に通う子供たちには理屈抜きに朝食を摂るように勧められたほうがいいかと私も思います。
    余談ですが、子供たちの肥満の原因としてポテトチップスやフライドポテトが元凶として取り上げられることがありますが、以前までは油が肥満の原因と思っていました。油より炭水化物の摂り過ぎが原因なのかもしれませんね。

  • #3

    にしもとようこ (土曜日, 13 10月 2012 11:57)

    とても丁寧にコメントの返信をお応えいただいて恐縮です。
    ありがとうございました!

    うちには3歳になるメスのコーギーがいます。
    飼った時に初めてペットの食事について考えたのですが
    市販のペットフードは炭水化物と添加物が多いと知りました。

    犬には炭水化物はあまり必要ないんですよね?

    フードは今通販で購入してます。
    体は食べ物で出来るということは
    犬も人も同じなので、気をつけてるつもりですが・・。

    アミールさんでもペットフードを開発されているそうで
    とても楽しみにしていますね!

  • #4

    くるりず (日曜日, 27 10月 2019 19:42)

    初めまして、炭水化物のことについて最近手作り食のセミナーにて教わったことがあり、ネットで本当か調べることができなかったため、先生にご質問させてください。

    うちにはスタンダードプードル23キロとトイプードル3キロの子が居ます。

    小型と大型は食べ物、レシピが違うと言われました。
    一つは炭水化物、糖質です。
    大型犬は糖質をとらなくても糖に体の中で変換できるシステムを持っているからとらなくてもいいが
    グレインフリーのドッグフードを食べて特にトイプードルで癲癇が起きる子が増えた。その原因は小型犬は糖質に変換できる機能を持ち合わせてないからだと言われました。
    だから小型犬には糖質を与えて下さいとのことでしたが、それは本当なのでしょうか?

    ちなみに、スタンダードの子がてんかんの一種のような発作、パウンディング、ものにぶつかり、目が合ってるのにあってないようなかんじ、首すじを触ると嫌なのか歯をむく表情、恐怖心、後ろ足の神経がおかしくなる
    というような事が今年になり三回あり、二回は30分で戻りましたが、3回目の先日は完全に戻るのに12時間かかり、次の日のお散歩朝夕でも様子がおかしくなって
    MRI CTを撮りましたがいじょうなしでした。
    いまする治療はないと言われましたが、手作り食で糖がしつがたりないからとおもったのですが
    糖質変換できるなら必要無いはずなのに、謎です。

    ちなみにうちのこのような症状のてんかん発作の症例をみられたことがありますか?
    何人かの先生はないとおっしゃって、不安です。

  • #5

    アミール動物病院 (月曜日, 28 10月 2019 19:54)

    くるりず 様

    まず、最初の質問ですが、体内にはアミノ酸や有機酸から糖を作る機能があります。これを糖新生といって、ほぼすべての哺乳類が持つ機能です。それゆえ、小型犬、大型犬に関わらず、また犬種に関わらず、持ち合わせている機能です。それゆえ、健康な子であれば、糖質を摂取しなくても問題は生じないはずです。
    ちなみに私の愛犬も看護師の愛犬も糖質は与えていません。必須栄養素ではないからです。それは人も同じで、糖質は必須栄養素にはなっていないのです。必須アミノ酸や必須脂肪酸はありませが、必須な糖質は無いからです。

    糖質とてんかんに関してですが、難治性てんかんの治療の一つとしてケトン食療法というのがあります。言葉をかえると、糖質制限食療法です。糖質はてんかんを悪化させる要素になるのです。詳細なメカニズムはまだ解明させていないのですが、インスリン様成長因子が発症や悪化の要因を示唆する論文もあります。糖分を摂取すると血糖値があがります。それに合わせてインスリンが分泌されるのですが、このインスリンがインスリン様成長因子も増やしてしまうのです。それゆえ、インスリンを分泌させないケトン食療法でてんかんの治療が行われています。

    スタンダード・プードルで、紹介されているような症例の経験はありません。動物種は違うのですが、動物園に勤務時、よく似た症例の経験はあります。亡くなった後の病理検査で、脳にアミロイド沈着が確認されました。アルツハイマー型認知症でもアミロイド沈着が悪化の要因という報告もありますし、脳にアミロイドが沈着すると様々な症状を引き起こします。アミロイドは慢性的な炎症反応により作られやすくなる蛋白で、リウマチとかでもアミロイド沈着が生じやすくなります。最近の報告では、インスリンもアミロイド産生の要因になるという論文もあるので、総じて糖質は制限するほうが良いと思われます。

    てんかんの介護は大変ですが、最後まで頑張ってください。

  • #6

    くるりず (水曜日, 30 10月 2019 09:29)

    お忙しい中お返事頂きありがとうございました。
    糖新生のこと、セミナーで確かに言っていましたが、小型犬はそれができないと言っていたのですが
    大型小型共にできるのですね。
    ありがとうございました。
    どちらにせよ、糖質は必要ないとの事理解しました。
    因みにてんかんなら玄米をあげよと言うのも必要ないでしょうか?ギャバがあり神経が強くなると言われましたが。

    うちの子の症例は部分発作にも入らない感じでしょうか?やはり先生も見たことがないという事で、この先どうなるんだろうと不安です。

    アミノロイドが沈着しないようにする方法と言うのはあるのでしょうか?
    犬で若年性の認知症になるとかもありますか?

    手作りでは
    肉300g 野菜やキノコなど湯がいた状態で60g
    天然塩・オメガ3.6.9油・乳酸菌生産物質・肝20g・たまに鶏ガラ・海産物などです。それにてんかんだと糖質がいるかと思い白米をすこしだけあげたりしていました。
    7.8月のみ下痢粘膜便はなかったのですが

    とにかく、お腹も弱い子で
    今年に入り手作りにし安定しなくなり
    ドックフードの方がいいのかなど、ほんとに何をしていいかわからなくなってきています。
    引き取る前はロイヤルカナンを食べていてお腹は弱くなかったと言われました。
    うちにきて、手作りや質のいいフードにしてなかなか安定しなかったのですが。

    手作りにすると特にうちの子は
    ウンチはとても少なかったり2日に一回だったりしてます。フードによっても1日1回やたまにしなかったりのときもそれは気にしなくていいのか?

    1年前から犬猫漢方専門医より冬虫夏草を主体の熱を取り炎症を抑える漢方もいます。
    いまは神経にきく田七人参主体の血流の漢方もすこし
    半年間ドッグフードと漢方のみで
    全くなにもなかったのですが、
    今年から手作りのせいだとはおもえないですが
    徐々に安定しなくなりました。
    腸を触診していただき慢性的な腸疾患の腸ではないといわれましたが。

    今年安定しなくなり
    2.6.9月にこのような症状がでたしました。

    食事の関係で腸内フローラがみだれると
    てんかんになりやすいともきき、関係があるのか?

    こう言う子に何をしてやるのが一番いいかありますでしょうか?
    もぅ、ドックフードに戻そうか迷っています。
    因みに、ローズマリーエキスがはいっていたら神経毒ケトン体が蓄積されるからダメだというのもききました。
    後、最初に質問いたしました
    玄米や大麦さつまいもやジャガイモ入っているフードはよくないですよね?
    豆類は大丈夫ですか?
    まとまりのない文章で
    たくさんの質問で申し訳ないです。
    書ける範囲で教えていただければ幸いです。

  • #7

    くるりず (水曜日, 30 10月 2019 09:42)

    追記

    すいません、先程色々焦って書きましたが
    なんども先生のお返事を読みましたら

    アミノロイドを付着させたく無いなら
    炎症を起こすような事がないようにする、インスリンをあげ内容糖質制限すると言うことになるんですよね?
    慢性的な腸の乱れなども炎症の一種になりますか?
    漢方で炎症をおさえれるなら飲み続けようかともおもいました。

  • #8

    くるりず (水曜日, 30 10月 2019 11:16)

    すいません何回も追記して申し訳ありません。

    うちのスタンダードプードルは2歳半で里親になりました。2歳までに3回も妊娠し、早産で死産ばかりで3回目は途中帝王折角でだしたようです。
    うちに来てからがおなか安定せずです。

    手には腫瘍もありましたが良性でとりました。避妊もそのときにやりました。

    すごく簡単ですが経緯です。

  • #9

    アミール動物病院 (水曜日, 30 10月 2019 23:58)

    くるりず 様

    詳しい記載、恐れ入りますが、返信に困ってしまします。

    まず、GABA。てんかんは脳の病気ですが、脳内の神経伝達メカニズムは非常に複雑です。抗てんかん薬には、GABAの代謝を阻害する薬物とGABA受容体を活性化させる薬物があります。互いに相反する作用機序です。発芽玄米にはGABAが多いから積極的に与えようという発想は控えた方がいいまもしれません。有害、無害、どちらに働くか予測が難しいのと、神経系の作用はそんな単純なものではないからです。

    慢性腸炎を患っているようですが、その場合、アミロイド産生の要因になりえます。仮に脳内にアミロイドが沈着していると仮定すると腸にもアミロイドが沈着している可能性も高くなります。クローン病ってご存じでしょうか?慢性腸疾患の一つですが、こちらの疾患では続発性アミロイドーシスが問題になることがあります。腸炎対策から始めてもいいのではないでしょうか。
    まず腸粘膜を強化するために、ビタミンAとDの強化をはかってみてはいかがでしょうか?食材から欠乏している状況ではないようですが、十分吸収されていない可能性は否定できません。また、犬では、おからパウダーに整腸作用がみられます。食材に加えてみてはいかがでしょうか。
    ローズマリーにしても、気にしなくてもいいのでは?どれだけ吸収されるかの問題で、例えば、お酒の前にウコン!と言って積極的に摂取されている方も多いのですが、実はウコンは吸収が悪く、果たして本当に効果が出ているのか疑問が残りますし、サプリメントには過度な期待や恐れは持たなくていいのではないでしょうか。
    腸内フローラまで話を膨らませると、何から説明していいのか、ここでの記載は控えさせていただきます。中途半端な説明は誤解を生むので。

    最後に、てんかんとケトン食に関しては、たくさん情報があふれていると思うので、そちらを参考にしてください。がん予防に関してもケトン食の有効性が多くの医学論文で報告されています。健康を考える上で参考にしてみてはいかがでしょうか。

    その他、病気に関連することは、かかりつけ獣医師に相談してください。
    第三者が診察もせずにネット上でコメントするのはいただけないことだと思います。

  • #10

    くるりず (木曜日, 31 10月 2019 06:37)

    無理なお願いの返信をしていただき
    お忙しい中であるのにありがとうございました。
    いろんな医師に診ていただくも、今は様子見てるだけと言う具体的な対策等なく
    どうすればいいかわからない状況で、思わずたくさん質問してしまい先生を困らせてしまい、申し訳ございませんでした。

    近くなら診ていただきたい思いでいっぱいです。

    とりあえず、腸を安定さすことが先決ですよね。
    長い質問に答えてくださり感謝します、ありがとうございました。

臨時休診のお知らせ

12月23日(月)

終日休診とさせていただきます。

 

ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします。

       

正月休みのお知らせ

 

年内の診察は12月30日までです。

 

12月31日から1月3日まで休診します。

 

よろしくお願いします。