今日はサプリメントについて
サプリメントとしてあまり馴染みが無いと思われるタラ肝油を最初に紹介しようと思います。
今朝、FMラジオから「滋養強壮のため、ウナギを食べたい」という話が聞こえてきました。ウナギから得られる滋養強壮とは?代表的な栄養素は何と言っても脂溶性ビタミンであるビタミンAでしょう。その他、ビタミンD、E、B群等も豊富なため、滋養強壮の食材として人気が高いのも分かります。そこで、あらためてビタミンAについて話をしようと思います。
ビタミンAというと、やはり過剰症を心配する方々が多くいるという印象を受けます。そのため、サプリメントでビタミンAを摂りたいと思われる方は少ないようです。ビタミンAのプロビタミンであるβカロチンは体内で必要な量だけビタミンAに変換されるため過剰症の心配がないという点で、ビタミンAはβカロチンで摂取という方が多いように見受けられます。それをどうこう言うわけではなく、ただβカロチンは利用効率が悪いということは是非知っておいてください。
動物性食材のビタミンAは、大半がレチノールと呼ばれる成分で、その他、代謝を受けてレチナールやレチノイン酸に返還されます。これらビタミンAの効能は、簡単にまとめると、粘膜を健康に保ち消化器系や呼吸器系の免疫力を高める、皮膚を健康に保つ、細胞核DNAの安定化(ガン化の抑制)、暗いところでも視界が広がる、などの作用があります。私たち動物は、皮膚を除くと、外界の世界とは粘膜で接しています。口から肛門までの消化器系や鼻から肺までの呼吸器系、目の表面など、すべて粘膜で覆われています。ビタミンAには、これら粘膜を正常に機能させるために必要な栄養素なのです。このような粘膜は動物の体内の中で最大の免疫機関です。粘膜を強化することは健康への第一歩であるため、ビタミンAは滋養強壮に欠かせない栄養素なのです。
このような働きのあるビタミンA食材のなかで、お勧めなのが「タラ肝油」です。タラ肝油には、ビタミンA以外に、ビタミンDや不飽和脂肪酸であるDHAやEPAが豊富に含まれています。そのため、アレルギー体質や循環器疾患にも有効なサプリメントなのです。
ビタミンAに関しての補足
これまでの報告より、ワンちゃんはビタミンA過剰症になりにくいようです。与え過ぎの心配がないというのは、獣医師の立場では安心して処方できます。
ビタミンAの一つ、レチノイン酸は「クッシング症」に有効との報告が多数あります。ヒトの医療ではかなり確信的な報告が続いています。クッシング症のワンちゃんと生活している方には、タラ肝油を検討してみてはいかがでしょうか。
また、このレチノイン酸は皮膚でコラーゲンの産生を促し、皮膚の保水力やバリア機能を高める効果が報告されています。そのため、乾燥肌のワンちゃんや皮膚バリア機能の弱いワンちゃんにお薬と一緒にタラ肝油を処方することがあります。
*国内でレチノイン酸は、肌のしわとりクリームとして商品化されているので、耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ビタミンAは光や乾燥に弱い。そのため、ドライフードには多めのビタミンAが添加されています。ただ、天然のビタミンAなのか合成のビタミンAなのかの記載はありません。天然のビタミンAを時々でもいいので、動物たちに与えてほしいと思います。
今日は長文になってしまいましたが、お読みいただき、ありがとうございました。
コメントをお書きください
徳弘直子 (火曜日, 10 7月 2012 01:13)
ペコはFishOil/EPA&DHAを与えてますが、アレルギーがあり湿疹もよくできるペコにはタラ肝油の方が良いのでしょうか?
ameal-ahp (水曜日, 11 7月 2012 22:12)
返事が遅くなり失礼しました。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
タラ肝油に含まれているEPAやDHAは15%程度です。
タラ肝油でEPAやDHAを補おうとするとビタミンの摂り過ぎになります。
アレルギーに対してEPAやDHAは有効との報告が多数あります。
EPAやDHAなどのn-3系不飽和脂肪酸とn-6系不飽和脂肪酸とのバランスが大事なのですが、自然食を勧める獣医師の本村先生は、EPAやDHAのアレルギーを抑えるための摂取量を60mg/kgとしています。
この量は何の報告から引用しているのかは分かりませんが、多くの論文で報告されているフード100kcal中のEPAやDHAの投与量を体重kgあたりに返還すると、確かに近い値になります。
一度、Fish Oil の摂取量を確認してみてはいかがでしょうか。
Fish Oil の摂取はお勧めですので、継続されることを願います。
私が何の身寄りもない高知県に就職して、今のように高知大学で研究を始めるきっかけを作ってくれたのが魚油(EPA/DHA)の研究でした。
当時は、リウマチ様疾患で次々に亡くなる野生動物を、なんとしても助けたい、その病気から救うには魚油しかないとの思いだったのです。
日本脂質栄養学会の会長だった富山医科薬科大学の浜崎教授に助けを求めたら、どこの誰かも分からない私の願いを聞き入れてくれたのです。そして直接ご指導を受けるために何度か富山まで出向きました。いまだに浜崎教授には感謝しています。
魚油についても、またブログで紹介させていただきます。
その時も、コメントいただけたら幸いです。
田井中 英信 (木曜日, 21 4月 2016)
初めまして
我が家のミニチュアダックスがドライアイで、病院でヒアレインの目薬を貰って点しています。
タラの肝油が有効と聞き購入しました。
4.4キロの体重ですが、一日どれぐらいが適量なのでしょうか?
すみません、宜しくお願い致します。
アミール動物病院 (金曜日, 22 4月 2016 01:31)
田井中 様
ご質問の件ですが、タラ肝油に含まれるビタミンA濃度にもよるのですが、概ね1日あたり1mlで十分だと思われます。
犬においてビタミンA過剰症は起こらないと言われています。そのため、与えすぎの心配は無いのですが、実際は与えすぎると嘔吐することがよく観察されます。
嘔吐するビタミンAの量は個体差がありますので、上記の量はあくまで目安で、与え続けて食欲が下がったり嘔吐がみられたら、与える量を減らすようにしてください。
木下 (金曜日, 28 7月 2017 00:49)
タラ肝油のサプリをあげたいのですが、家にあるものは大人1日1錠とのことでした。
ウチの犬はシーズーで、体重は5キロです。どのぐらいあげればよいですか?
大人の約10分の1の体重なので、人間の1錠をあげると多い気がするのですが、平気なものでしょうか?
よろしくお願いします。
アミール動物病院 (月曜日, 31 7月 2017 22:15)
木下 様
一般的には体重1kgあたりビタミンA:1,000IUとなり、体重5kgですと5,000IUくらいでしょうか。
これはあくまで目安であって、これより少なくても多くても構いません。
犬ではビタミンAの過剰症は起こりにくいようで、そのことを示す論文もいくつかあります。
当院の経験では、上記の量だと吐く犬が時々見受けられるので、そのような犬は体重1kgあたり100IUまで減らしてもらってます。
また、サプリメントに関して国内産は外国産に比べて人の1日量が少なく抑えられているので、動物への与え方を一括りで紹介できないのですが、概ねは犬の体重20kgが人の1日量として紹介することが多いです。
藤吉 (火曜日, 14 8月 2018 18:46)
はじめまして。
脂腺炎の秋田犬と暮らしています。
(普通の脂腺炎ではなく、秋田犬特有の全身では無く頭と背中の毛が抜ける。)
そう言う場合にも肝油は効果があるのでしょうか?
また、効果があるなら与えたいと思うのですが、38キロの秋田犬の場合、38000IUと言うことになるのでしょうか?
今、アトピカとアドナを与えています。
アミール動物病院 (土曜日, 18 8月 2018 19:59)
藤吉 様
当院でも症状によってビタミンAの投与を勧めることはあります。その場合、大型犬なので、1万単位/頭くらいから始めています。
皮腺炎の場合、マラセチア対策を行ったうえで、ビタミン等のサプリメントはあくまで補助療法になります。ビタミンAだけではなく、ビタミンE、ビタミンD、亜鉛等も併用しています。
ご参考まで。