獣医さんのお仕事 -ボランティア-

動物園の獣医師の仕事は、診療とデスクワークで1日が終わります。不必要とも思える書面のやり取りが多く、園内の仕事だけで1日が終わります。そのため、外部から突然依頼される仕事のほとんどは上司が断っていました。そのため、見かねた依頼は個人で引き受けていたので、それらの仕事はすべてボランティアとして行っていました。そんなボランティア活動の中で、最も印象的なウミガメの保護について紹介します。

 

2003年秋、高知県室戸市で腫瘍を発症したアオウミガメが保護されました。保護したのはウミガメの保護活動をしてるNPO法人でした。彼らは、このアオウミガメが患っている病気を診断してくれる獣医師を探しはじめ、須○水族館職員から私を紹介されたということで電話が入りました。私も突然のことで、事情が全く分からなかったのですが、その旨を上司に報告すると、園としてはその依頼を受け入れないとのことで、結局、個人的にその依頼を受けることになりました。

 

まず腫瘍を診断するには、病理組織標本を作らなければなりません。そのため、高知大学医学部に組織標本を作るための協力をお願いしました。また、ウイルスの関与も疑われたので、高知大学農学部で遺伝子検査も始めました。

話に登場したアオウミガメの症状は全身に乳頭腫が発症したもので、その様子を写真で紹介します。

 

 

 

2003年10月、このアオウミガメに発症した病気が判明しました。病名は「フィブロパピローマ」と言われる線維性の乳頭腫で、発症にヘルペスウイルスが関与しています。遺伝子検査でも、ウミガメのヘルペスウイルスのDNAが確認され、この疾病と確定することができました。ウミガメのヘルペス遺伝子が検出された時は、我ながら少し興奮しました。それは、国内でこの疾病が診断されたのが初めてだったからです。当初は、日本近海にもウミガメのヘルペスウイルスが広がってきたのかと心配されましたが、ヘルペス遺伝子を解析すると、ハワイで蔓延しているウイルスと判明し、このアオウミガメはハワイで感染し、その後、太平洋を回遊して日本まで北上してきたことが推察されました。遺伝子の解析から、このアオウミガメの行動範囲が分かったことに感動した事例でした。そして、このアオウミガメは室戸で引き続き保護されることになったのですが、2003年10月に国内で何が起きていたかご存知でしょうか?

 

2003年10月、国内では「コイヘルペス」の大流行で連日のようにマスコミに取り上げられ、未知なる病気として世間は大騒ぎでした。そんな中で、同様のヘルペスウイルスを患ったアオウミガメを保護することになったのです。漁港の片隅で保護飼育を始めたのですが、漁師さんはあたたかく受け入れてくれて、当時は本当に感謝しました。

 

その後は、室戸でアオウミガメが保護される度に室戸まで出向いて、ウミガメの採血とヘルペス感染がないかの遺伝子検査と忙しい毎日でした。季節は冬になり、冷たい風が吹き抜ける中でのウミガメの採血は大変でした。昼間の採血もあれば夜中の採血もあり、NPOの方々と震えながら採血したのは今でもいい思い出です。ただ、ガソリン代や検査試薬代が自腹だったので、当時は大好きなお酒を我慢してボランティア活動費にあてていました。有休休暇も大半はウミガメに費やしましたが、意外に楽しかったです。冬場の飼育に関しては、高知大学農学部が支援してくださり、水槽をヒーターで温める電気代等を肩代わりしてくれました。周りからの協力に感謝する毎日でした。

 

ウミガメの保護は、定置網に迷い込んだウミガメを救助して再び海に帰すという活動をNPO法人が行っていました。ウミガメに関わったので、私も定置網漁を体験でき、これもいい思い出になりました。一般参加も当時は出来ていたので、今でも体験できるかもしれませんよ。

下の写真ではウミガメが救助される様子はないですが(その時は私も作業に加わっていたので写真を撮る余裕は無かったもので)、定置網漁の様子を紹介させていただきました。船が沖にでると、たくさんのカモメが船を追いかけてくる光景も見てて楽しかったです。

 

このウミガメの保護に関わったボランティア活動は約1年半を費やしました。

 

 

 

補足

高知で、こんな幼いアオウミガメも保護されました。高知はアオウミガメが北上する上限と言われています。アオウミガメは草食性なので、綺麗な海岸線を維持できるように努めたいものです。 

 

 

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