セキセイインコの抗酸菌症

細菌検査の中で診断が厄介なのが抗酸菌の診断ではないでしょうか。

それは細菌培養が難しく、しかも培養に数十日もかかるので簡単には探し出せないからです。最近では遺伝子検査も行われていますが、臨床材料から検出するのは難しいというのが私の経験です。

抗酸菌の中で人畜共通伝染病にあたるのが結核菌です。結核菌とは遭遇したくないですね。 

 

今回は、抗酸菌の診断に欠かせない染色法を取り上げて、ご紹介させていただきました。

 

上の写真は急に元気が消失したとう主訴で来院し、その日に死亡したセキセイインコです。

死亡原因を調べるため解剖を行ったところ、肉眼的には顕著な異常は確認されませんでした。右の写真は胸部を開いた写真で、心臓や肝臓を露出しているものです。肝臓の下に白っぽく見えているのは筋胃と呼ばれる胃袋です。

そこで、肝臓組織をプレパラートにスタンプして、ギムザ染色およびチール・ネルゼン染色を施して顕微鏡下で観察したところ、抗酸菌が確認され、死因は抗酸菌症と考えられました。 抗酸菌症は国内では珍しい病気なので、すべての臓器をホルマリン固定し、高知大学で病理組織標本を作製することにしました。

上の図は、代表的な3つの染色法で染めた病理組織標本です。ここでは同じ部位で3つの標本を作り、チール・ネルゼン染色と呼ばれる抗酸菌染色を行わないと抗酸菌は染色されないというのを示す教材として紹介しています。

左側の図は上下ともチール・ネルゼン染色を施した肝臓の病理組織標本です。上は弱拡大、下は強拡大図です。赤く染まっているのが、抗酸菌です。

中央は細菌を染める代表的な染色法であるグラム染色標本です。この染色法では、青く染まるものをグラム陽性菌と呼び、赤く染まるものをグラム陰性菌と呼びます。主な細菌は、この染色法により確認することが出来るのに、抗酸菌は染色されないため確認できません。

右側の図は組織標本を染める代表的な染色法で、ヘマトキシリン・エオジン染色、略してHE染色を施した病理組織標本です。抗酸菌は確認されませんが、明らかな病変が認めらるため、抗酸菌症の診断は可能な異常所見が認められます。

(これらの病理組織標本は高知大学医学部病理学教室のご協力にて作製したのもです)

 

抗酸菌症の診断には、ある程度経験も必要です。私は幸いにも法定伝染病であるヨーネ病を経験できたため、当症例において抗酸菌を見落とすことなく診断できたと思います。エキゾチックを診療する動物病院では、是非、抗酸菌染色法を身につけて頂きたく思い、このような資料を搭載させていただきました。皆様のお役に立てれば幸いです。

補足:一部の臓器をアルコール固定し、抗酸菌のDNAを抽出して菌の同定を試みたのですが、結果的に上手くいきませんでした。この点が非常に悔やまれます。

抗酸菌染色-チール・ネルゼン染色

写真は私が使用している染色液です。抗酸菌染色を行う頻度は少ないので、100mlの小瓶を準備しています。

画面左から、チール・カルボールフクシン液(武藤化学)、3%塩酸アルコール(武藤化学)、レフレル・カリメチレンブルー液(武藤化学)の3点です。月に1回、使うか使わないかの染色液ですが、もしもに備えて準備しています。

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