動物の腸管から乳酸桿菌(ラクトバチルス菌)の分離

 

乳酸菌と長い付き合いになるきっかけ、それは不思議な動物、レッサーパンダの治療のためでした。

レッサーパンダ(英語ではレッドパンダ)は多くの動物園で見ることができる日本でも人気のある動物です。レッサーパンダには、ネパールレッサーパンダとシセンレッサーパンダの2亜種がいて、国内ではほとんどがシセンレッサーパンダが飼育されています。私がレッサーパンダを不思議な動物というのは、彼らの食性からは想像できない腸の作りをしているからです。レッサーパンダの主食は「ササ(笹)」。消化されたササ便は発酵臭がします。それなので、レッサーパンダには大きな盲腸があるものだと思っていました。ところが、亡くなったレッサーパンダを解剖すると腸の作りは犬と同じでした。このような腸で何故ササを消化できるのか理解できませんでした。そんな折、そのレッサーパンダが頻繁に腸炎を起こすようになりました。粘膜便と呼ばれる便を排泄し、その時は食欲も無くなり、一日中うずくまり腹痛があるように思える状況でした。いろいろな薬を飲ませても、不定期に繰り返される腸炎。その治療への対策として彼らが持っている乳酸菌を分離して、それを増やして再びレッサーパンダに飲ませるというのを目標に乳酸菌の分離に取り組むことにしました。

乳酸菌には、形状で2種類に分けることができます。一つは短い棒の形をした乳酸桿菌ともう一つは球形の乳酸球菌です。この中で、様々な健康への効果が報告されている乳酸桿菌に注目して、この菌の分離を試みました。最初は、なかなか乳酸桿菌(以後、乳酸菌と記載)を見つけることが出来ず、一時は乳酸菌はいないのかと思う始末でした。そうして最初に分離された乳酸菌は、Lactobacillus paracaseiという菌でした。

 

野生動物の乳酸菌

 

レッサーパンダから分離した乳酸菌は高知大学農学部で、その働きを色々調べましたが、その話はまた次の機会に。

今回は、様々な野生動物の糞便から乳酸菌の分離を高知大学の学生さんと行った話をします。野生動物の糞便には様々な菌がいます。中には危険な菌もいるかもしれません。そんな便を使って学生さんと実験するからには安全性という点で私に監督責任が生じます。それでも安全に実験出来るのには、一つ理由があります。それはpH(ピーエイチ)です。酸性やアルカリの指標になるpHです。どういうことかと言うと、例えば食中毒菌を例にあげると、これらの菌は酸性環境(pH4以下)では増えることができません。中には死んでしまう菌もいます。なので、糞便を酸性水に浸けてしまえば、病原菌から身を守ることができるのです。もちろん安全を確認して実験をしているのですが、中には危険性を指摘する方もいるので、このような実験方法を立てて乳酸菌の分離を行いました。また、酸性水で死んでしまうような乳酸菌は必要ありません。なぜなら、生きて胃を通過出来ないからです。このようにして学生さんらと分離した乳酸菌は下のスライドで紹介させていただきました。

次は犬から乳酸菌の分離を試みました。その話は次回に。

 

乳酸菌の分離方法

 

私たちが行ってる乳酸菌の分離方法を紹介します。これまで、いろいろと試行錯誤を繰り返し、他の研究者の報告を参考にしながら、現在の方法に落ち着きました。その方法は下のスライドで紹介しています。糞便を希釈して、直接、培地に撒いて乳酸菌が見つかるのは稀で、多くは液体培地で乳酸菌を増やしてから、培地に撒いて乳酸菌を見つけています。もう1枚のスライドは、野生動物から乳酸菌を分離した最新のリストになります。前に紹介したように乳酸菌には2種類あって、それは桿菌と球菌です。学名で書くと、Lacto(乳酸:ラクト)+bacillus(桿菌:バチルス) Lacto(乳酸)+coccus(球菌:コッカス)となります。この中で、乳酸桿菌のみリストに記載しました。それは乳酸菌が持つ免疫機能に注目しているからで、その免疫機能の報告があるのは乳酸桿菌がほとんどだからです。

例えば、ピロリ菌と戦う乳酸菌LG21は、Lactobacillus gasseri(ガゼリ) OLL2716です。乳酸菌で最も有名なヤクルト菌は、Lactobacillus casei(カゼイ) シロタ株です。これらは乳酸桿菌なのです。

このような乳酸桿菌を身近な犬から分離してみようと試みると、予想に反して乳酸桿菌を分離することができません。犬の腸内から見つかる乳酸菌は、Pediococcus(ペディオコッカス)と呼ばれる乳酸球菌とEnterococcus(エンテロコッカス)と呼ばれるヨーグルトなどにみられる乳酸球菌ばかりです。

腸内の乳酸菌は食べ物由来です。犬は野生動物と違い、生まれた時から加工食品(ドックフード)で育ってきたのが要因で乳酸菌が著しく少ないのではと危惧しているところです。

次は、乳酸菌が持つ免疫機能を紹介します。

 

免疫と乳酸菌

 

腸内細菌、一度は聞いたことのある人も少なくないと思います。腸管内は把握できない程の細菌が住みついています。そんな細菌たちが住みついている腸管内にも免疫細胞は働いています。これまで疑問に思うことは無かったと思いますが、腸管内に住む細菌をどうして免疫細胞は排除しないのでしょうか?ここに免疫と腸内細菌の切っても切れない関係があるのです。

・・・・執筆中・・・・

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